漂着したごみの中から見つかったクジラの龍涎香

漂着したごみの中から見つかったクジラの龍涎香

海岸に漂着するごみが、大きな社会問題となっています。周囲を海に囲まれている日本は、海岸に漂着するごみの数が特に多く、各自治体では処分に困っています。日本に漂着するごみの中には、海外から流れてきたものも多く、アジア諸国やロシアの言葉が書かれたごみも珍しくありません。ですが、海岸に漂着するごみの中には、非常にまれですが、高い価値を持っているものもあります。

こうしたごみの中でも、特によく知られているのが龍涎香です。龍涎香とはクジラの腸内で作られた結石のことで、非常に高い価値を持っています。結石とは体内の分泌物が固まってできたもののことで、クジラの体内から定期的に排出されます。龍涎香にはクジラのエサとなっているタコやイカの体の一部が、原型をとどめたまま残っていることも多いです。体内で消化できなかったため、結石として排出されたと考えられています。

本来はごみであるはずの龍涎香が高い価値を持っているのは、香料として人気があるからです。日本や他のアジア地域でも古くから珍重されていて、欧米でもよく知られています。体から外にでたばかりの龍涎香は海や排泄物の匂いが強いですが、時間が経過すると熟成して、土の香りを持つ甘い匂いになります。商業捕鯨が行われていた時代には、捕獲されたクジラから採取することも可能でしたが、商業捕鯨が禁止されてからは、海岸に流れ着いたごみとして集めるしか入手方法がなくなっています。そのために、昔よりも龍涎香の希少価値は大幅に増加しています。

龍涎香がごみとして海岸に流れ着くのは、海水より比重が軽いからです。海中でクジラの体内から排出されても、自然に浮き上がってくるため、海岸まで流れやすくなっています。砂浜で偶然見つければ、一攫千金のチャンスもありますが、場所によっては海岸に落ちている砂や石を持ち帰れない場合もあるので注意が必要です。龍涎香はサイズが大きいほど高額で取引されていて、大型のものは7000万円以上の高値がつけられたこともあります。